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きたのくにのはなし

北の国のはなし

小川 未明

「赤い鳥」1921(大正10)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,920 字 · 6 页

青空文庫

あるところにぜいたくな人間が住んでいました。時節をかまわずに、なんでも食べたくなると、人々を方々に走らしてそれを求めたのであります。

「いくら金がかかってもいいから、さがしてこい。」と、その人はいいました。

ある日のこと、その人は、川魚が食べたいから、釣ってきてくれと、下男にいいつけました。

下男は当惑をしました。外を見ると真っ白に雪が積もっていました。どこを見ましても、一面に雪が地を隠していました。その村は、北の寒い国のさびしいところであったからであります。

しかし、いいだしたうえは、なんでもそのことを通す主人の気質をよく知っていましたので、彼は、急に返事をせずに思案をしていました。

「なんで、そんなに考え込んでいるか。そのかわり、もしおまえが魚を釣ってきたら、お金をたくさんやる。またおまえのほしいというものはなんでもやろう。そうすれば、おまえは、家を持って、こんどは主人になることができる。」と、主人はいいました。

下男は、そう聞くとまた喜ばずにはいられませんでした。お金をもらい、品物をもらって家を持つことができたら、どんなにしあわせなことだろう。