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きたむらとうこくのみじかきいっしょう
北村透谷の短き一生
島崎 藤村
「文章世界」1912(大正1)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,267 字 · 17 页
でも愛山氏などは、殆んど正反対に立った論敵ではあったが、一面北村君とは仲の宜い友達でもあった。それから喧嘩をして却って対手に知られた形で、北村君は国民の友や、国民新聞なにかへも寄稿するようになった。その中で、『他界に対する観念』は、北村君の宗教的な、考え深い気質をよく現わしたものである。それから国民の友の附録に、『宿魂鏡』という小説を寄稿した事があったが、あれは自分で非常に不出来だったと云って、透谷の透の字を桃という字に換えて、公けにしようかと私に話した位であった。あの作は透谷君の得意の作では無論無かったと思うが、でも私にはその病的な方面が窺われるかと思う。文学界に関係される頃から、透谷君は半ば病める人であったと、後になって気が着いたが、皆と一緒になって集って話していても、直ぐに身体を横にしたり、何か身を支えるものが欲しいというような様子をしていた。斯ういう身体だったから、病的な人間の事にも考え及んでいたらしく、その事は内田魯庵氏の訳された『罪と罰』の評なぞにも現われていると思う。透谷君の晩年を慰めた一人の女の友達があったが、病床にいる時に、それとなくこの人に書いて宛てた慰めの言葉は、確か『山庵雑記』