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じゅうごねん

十五年

山本 実彦

「改造」1934(昭和9)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,158 字 · 17 页

青空文庫

私は、この人は東洋のさびもわかる人である、とも思った。お能を見たとき、伶人の古楽をたのしみきいたとき、その批評がなかなか堂に入ったものであった。『改造』の十五年を叙して、思わぬ横町の風景にまではいってしまったが、私は教授の如く、文明、文化、百年、千年のため、常に第一義的聖線に立ち得る資格について、深刻な瞑想にさそわるることもたびたびあった。自分たちは今、いかなる人間としての役割についているのか。発売禁止とか、切取りとかの険を冒して、何のために営々努力しているのか。われわれの最後の一線は、どこにあるのか。文化のためとか、文明のためとか、国家や、民族のためと、漠然とは言い得るにしても、さて、具体的にわれわれの方途を解剖し、理論づけることのできないプアな状態にあったその当時の私であった。

だが、その当時からすれば我が日本もいちじるしく大人になった。そして万事が大国的に、外の大民族と対等の文化的姿勢を取れるようになった。我が民族は伸び行く地力と、咀嚼とがあった。さりながら、私はそのときから十四年も経過して、依然呉下の阿蒙たる地位を脱することの出来ない身である。