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じゅうえんさつ

十円札

芥川 竜之介

穷得叮当响的作家堀川保吉,口袋里只剩六十钱,却还惦记丝帽、音乐会和女人。一张十円钞票的出现,能让他体面地撑过这一天吗?

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,647 字 · 18 页

青空文庫

来ているのは格別不思議ではない。が、禿げ上った額にも、近眼鏡を透かした目にも、短かに刈り込んだ口髭にも、――多少の誇張を敢てすれば、脂光りに光ったパイプにも、ほとんど女人の嬌羞に近い間の悪さの見えるのは不思議である。保吉は呆気にとられたなり、しばらくは「御用ですか?」とも何とも言わずに、この処子の態を帯びた老教官の顔を見守っていた。

「堀川君、これは少しですが、……」

粟野さんはてれ隠しに微笑しながら、四つ折に折った十円札を出した。

「これはほんの少しですが、東京行の汽車賃に使って下さい。」

保吉は大いに狼狽した。ロックフェラアに金を借りることは一再ならず空想している。しかし粟野さんに金を借りることはまだ夢にも見た覚えはない。のみならず咄嗟に思い出したのは今朝滔々と粟野さんに売文の悲劇を弁じたことである。彼はまっ赤になったまま、しどろもどろに言い訣をした。

「いや、実は小遣いは、――小遣いはないのに違いないんですが、――東京へ行けばどうかなりますし、――第一もう東京へは行かないことにしているんですから。……」

「まあ、取ってお置きなさい。これでも無いよりはましですから。