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じゅうえんさつ

十円札

芥川 竜之介

穷得叮当响的作家堀川保吉,口袋里只剩六十钱,却还惦记丝帽、音乐会和女人。一张十円钞票的出现,能让他体面地撑过这一天吗?

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,647 字 · 18 页

青空文庫

……

その内に汽車は動き出した。いつか曇天を崩した雨はかすかに青んだ海の上に何隻も軍艦を煙らせている。保吉は何かほっとしながら、二三人しか乗客のいないのを幸い、長ながとクッションの上に仰向けになった。するとたちまち思い出したのは本郷のある雑誌社である。この雑誌社は一月ばかり前に寄稿を依頼する長手紙をよこした。しかしこの雑誌社から発行する雑誌に憎悪と侮蔑とを感じていた彼は未だにその依頼に取り合わずにいる。ああ云う雑誌社に作品を売るのは娘を売笑婦にするのと選ぶ所はない。けれども今になって見ると、多少の前借の出来そうなのはわずかにこの雑誌社一軒である。もし多少の前借でも出来れば、――

彼はトンネルからトンネルへはいる車中の明暗を見上げたなり、いかに多少の前借の享楽を与えるかを想像した。あらゆる芸術家の享楽は自己発展の機会である。自己発展の機会を捉えることは人天に恥ずる振舞ではない。これは二時三十分には東京へはいる急行車である。多少の前借を得るためにはこのまま東京まで乗り越せば好い。五十円の、――少くとも三十円の金さえあれば、久しぶりに長谷や大友と晩飯を共にも出来るはずである。