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じゅうえんさつ

十円札

芥川 竜之介

穷得叮当响的作家堀川保吉,口袋里只剩六十钱,却还惦记丝帽、音乐会和女人。一张十円钞票的出现,能让他体面地撑过这一天吗?

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,647 字 · 18 页

青空文庫

第三に――最も意外だったのはこの事件である。第三に下宿は晩飯の膳に塩焼の鮎を一尾つけた!

初夏の夕明りは軒先に垂れた葉桜の枝に漂っている。点々と桜の実をこぼした庭の砂地にも漂っている。保吉のセルの膝の上に載った一枚の十円札にも漂っている。彼はその夕明りの中にしみじみこの折目のついた十円札へ目を落した。鼠色の唐艸や十六菊の中に朱の印を押した十円札は不思議にも美しい紙幣である。楕円形の中の肖像も愚鈍の相は帯びているにもせよ、ふだん思っていたほど俗悪ではない。裏も、――品の好い緑に茶を配した裏は表よりも一層見事である。これほど手垢さえつかずにいたらば、このまま額縁の中へ入れても――いや、手垢ばかりではない。何か大きい10の上に細かいインクの楽書もある。彼は静かに十円札を取り上げ、口の中にその文字を読み下した。

「ヤスケニシヨウカ」

保吉は十円札を膝の上へ返した。それから庭先の夕明りの中へ長ながと巻煙草の煙を出した。この一枚の十円札もこう云う楽書の作者にはただ酢にでもするかどうかを迷わせただけに過ぎなかったのであろう。が、広い世の中にはこの一枚の十円札のために悲劇の起ったこともあるかも知れない。