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ちよこ(さん)
千世子(三)
宮本 百合子
「宮本百合子全集 第二十八巻」新日本出版社、1981(昭和56)年11月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,906 字 · 54 页
瓦斯のポーポーと云う声よりももっと低い様な調子で話しながらしげしげ四方を見廻した。
そうして居るうちに、女中部屋のボンボン時計が間の抜けた大女の様な音で十一打った。
二人ははじかれた様に立ちあがって、
何ぼ何でもあんまりですから。
と云った。
「どうもお気の毒さま、さぞ待遠くていらしたんでしょうね。
「何がです?
「時計の鳴ってくれるのが。
急ににぎやかに入口に出ると肇は帽子をかぶりながら、
「お邪魔しました。
また今度上るかもしれません。
「どうぞ、
私のお天気屋と我ままと『かんしゃく』さえ御承知なら。
かるく頭をさげて千世子は笑った。
そしてまだ後姿の見えるうちに部屋へひっこんでしまった。
――○――
辺□な暗いばっかりで何のしなもない夜道を二人はぴったりならんで歩いた。そして若い女達がよくする様にお互に手をにぎりっこして水溜り等に来かかると、水溜の上に二人の手でアーチを作ってとび越えたりした。小石をけとばしながら篤は肇の顔をのぞき込む様にしてきいた。
「どうだったえ?
「何が?
「何がってさー、今日の訪問がさ、――どうだったかってきくんじゃあないか。