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ちよこ(に)

千世子(二)

宮本 百合子

「宮本百合子全集 第二十八巻」新日本出版社、1981(昭和56)年11月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,249 字 · 31 页

青空文庫

紫紺の極く濃いのと茶っぽい色とを好いて居る千世子が夏の外出に、白い帯に赤味がかった帯をすると気がさす様で仕様がなかった。

沢山の色が自由になると云う事が好い事で又悪い事だなどと云う事もあった。悲劇を産とも云った。

話の緒がフットした事でほぐれるといかにも自由に肇はいろんな事を千世子にはなした。

予期して居た通りいつ来た時でも「あくび」が奥歯の隅でムズムズする様な事がなかった。

自分の生い立ち等を話す時はあんまり神経的になりすぎた。

けれ共一度寄せた大浪が引く様に高ぶった感情がしずまると渚にたわむれかかる小波の様に静かに美くしく話す、その自分の言葉と心理をどうにでも向けかえる事の出来るのを千世子は羨みもし又恐ろしい事だとも思った。

千世子の好いて居る詩人をすき、絵風を好み、話をすく、肇は話がはずめば随分も長い間居た。

けれ共灯のつくまでも千世子を相手にしゃべる事はあんまりしなかった。

人の物を食べる口つき手つきで千世子は人がきらいになる事がないでもない。

漸く話のわかって来た友達を失うと云う事は嬉しい事ではないので結句その方が流し元まで響き渡ってよかったのである。