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ちよこ

千世子

宮本 百合子

「宮本百合子全集 第二十八巻」新日本出版社、1981(昭和56)年11月25日

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 83,104 字 · 164 页

青空文庫

千世子は目で笑って母親の横がおを見てから三人の商売人を見た。頬の丸味も目のきれいさも母の方が倍も倍も立ちまさった考え深さと美くしさをもって居た。着物でも持ちものでもどっからどこまでが母の方が美くしかった。

千世子はわけもなくうれしくなって肩をゆすって母親の肩に自分の肩をぶっつけた。三人の女は千世子を千世子は三人の女をお互に女にあり勝な批評的な目で見合って居た。

千世子の一隊は養生館前で車を下りて迎に出て居た男が沢山なトランクやドレッスケースを荷車にのっけて波の音のきこえる方に砂道をサクサク云わせながら引いて行った。その男はお世辞よく主人夫婦が大変まって居る事小供達が東京の話がきかれるとたのしみにして居る事なんかをかるい調子に話しては高く笑って居た。

(十二)

千世子達の姿が店のガラス戸にうつった時台所でたすきがけで居た主婦は、

「マアようこそ――ほんとうにお待ちして居たんでございますよ」

と遠くの方から子供達をつれながら云って出て来た。

「エエ又御やっかいになります、これが少し頭を悪くしましたんで……」

母親はこんな事を答えてお互に若い時から知って居る二人ははてしのない様におじきのしっくらをして居た。