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ちよこ

千世子

宮本 百合子

「宮本百合子全集 第二十八巻」新日本出版社、1981(昭和56)年11月25日

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 83,104 字 · 164 页

青空文庫

千世子は考える事のやたらに沢山な生活をして居た、そうして考えあまった様にこんな事も云った。

「私は夢中な恋が出来ないから必して恋はしない、私の進んで行く道は一つで沢山だ」

「Hさんが一人で居様と二人で居ようと私に関係はないんだ。

私は私をやたらに思って男の人達の心を犠牲にしてもっと尊いもっと光のあるものを作って行かなくっちゃあならない様に神様が作って御置きなったんだ!」

「Hさんをむごくしずともいいんだ、あの人が私をそんなに思ってて呉れるって事は真面目に感謝しなくっちゃあならない事に違いない。私はHさんがすきだ、だから私達は恋をするなんて事よりもっとお互に救け合って尊い物を作っていった方がいい」

千世子は広い大きな男の様な額でそんな事を考えた。そうして毎日毎日書けるだけ書きよめるだけ読んだ。

寒い晩であった、Hが来た時千世子はいかにも愉快そうな顔をしてHに云った。

「Hさん、私はもうこの頃すっかり迷う様な事もいやな思いをしなくっちゃあならない事もなくなっちまったんです……」

「どうして? 貴方に迷う様な事があったんですか?」

「ええ、あったんです、私が斯う云えば貴方には御わかりんなるんですワ。