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ちよがみのはる

千代紙の春

小川 未明

「少女倶楽部」1923(大正12)年9月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 4,985 字 · 11 页

青空文庫

町はずれの、ある橋のそばで、一人のおじいさんが、こいを売っていました。おじいさんは、今朝そのこいを問屋から請けてきたのでした。そして、長い間、ここに店を出して、通る人々に向かって、

「さあ、こいを買ってください。まけておきますから。」と、人の顔を見ながらいっていました。

人たちの中では、立ち止まって見てゆくものもあれば、知らぬ顔をして、さっさといってしまうものもありました。しかし、おじいさんは、根気よく同じことをいっていました。

そうするうちに、「これは珍しいこいだ。」といって、買ってゆくものもありました。そして、暮れ方までには、小さなこいは、たいてい売りつくしてしまいました。けれど、いちばん大きなこいは売れずに、盤台の中に残っていました。

おじいさんは、大きなのが売れないので、気が気でありませんでした。どうかして、それをはやく、あたりが暗くならないうちに売ってしまいたいと、焦っていました。

「さあ、大きなこいをまけておきますから、買ってください。」と、しきりにおじいさんはわめいていました。

みんな通る人は、そのこいに目をつけてゆきました。

「大きなこいだな。