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ちはやかんのめいろ

千早館の迷路

海野 十三

「ロック 増刊 探偵小説傑作選」1947(昭和22)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,829 字 · 50 页

青空文庫

そして浮彫の上には、白く砂だか灰だかが積もっていて、ここ何年もこの扉が開かれた様子はない。

帆村は、手袋をはめた手でもって、表扉の把手――それは黄金色の紅葉が散らしてあったが、それを握って廻してみたり、引いたり押したりしてみたが、扉は微動だにせず、ここから入ることの困難なることを示した。帆村は把手から手を放してからカズ子の方を振向いて、軽く肩をすぼめて見せた。カズ子は、よく分りましたという風に二三度肯いた。

どこか他に入れる戸口があるのだろうと思った帆村は、カズ子を促して建物について、ぐるぐる廻ってみた。裏手には確かに三つの出入口があったが、いずれも重い小鉄扉が下りていて、侵入を阻んでいた。しかも錆ついていて、ここ何年かそれらの扉が開かれたことがないのを語っていた。その先を建物についてなおも廻っていると、元の玄関の前へ出た。これで一巡したのである。三四丁もある遠道をしたような気がした。雑草が足をしばしば奪ったせいでそう感じたのかもしれないが……。

「どの戸口も開かれた様子がない。ふしぎだなあ」

と帆村は、春部を振返った。

「でも、これまでにこの千早館を訪れた人は、中へ入ったんでしょう。