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ちはやかんのめいろ

千早館の迷路

海野 十三

「ロック 増刊 探偵小説傑作選」1947(昭和22)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,829 字 · 50 页

青空文庫

(では、田鶴子がこの土地へ来ているものなら、必ずあの千早館へ入りこんでいるに違いない。どこかに、あの女が出入りしている秘密の戸口があるに違いない。よし、それでは正攻法だ)

帆村の肚は決った。彼は千早館の前を通りぬけ、どんどん反対の方向へ春部を連れていった。約五丁ばかり東南へ行ったところに、下に池を抱えた一つの丘陵があって、松の木が生い繁っていた。その丘陵へ帆村はずんずん登っていった。

「ここならいい。これから我慢くらべだ」

春部が聞き返したが、帆村は、しばらく自分のすることを見ていれば分るといって、彼の持っていた洋杖の分解を始めた。

まず洋杖の柄を外し、あとの棒をがたがたやっていると、それはいつの間にか三脚台に変った。次にその洋杖の柄を縦に二つに割ったが、それを見ると、中には筒に入ったレンズやその他いろいろな精巧らしい器具がぎっしり填まっていた。帆村はその中からいくつかの器具や部品を取出し、それを三脚台の上に取付けた。もう誰の目にもはっきりそれと分る望遠鏡が出来上った。帆村はクランプをまわして望遠鏡の仰角をあげると、その焦点を調整した。

「ああ、千早館をここから監視なさるのね」