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ちはやかんのめいろ
千早館の迷路
海野 十三
「ロック 増刊 探偵小説傑作選」1947(昭和22)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,829 字 · 50 页
「わたくしには、よく意味がのみこめませんけれど……」
「島というのはねえ、そのまわりについていくらぐるぐるまわっても、外へは出られないんです。そうでしょう、島ですからね。当人にそれが島だと気がつけば、そこで道が開けるんです。向いの壁へ渡っていけば、島を離れて本道へ出られるチャンスが開けるからです。しかしそれに気がつかないと、いつまでも島めぐりを続けて、遂には発狂したり斃れたりします」
「先生は、千早館にそのような島のあることを予期していらっしゃるんですか」
「有ると思いますよ。古神君は、迷路の島には異常な興味を沸かしていましたからねえ」
「島がみつかれば、どうなるんでしょう。そういえば私たちは、田鶴子さんの姿を見つけなかったし、田鶴子さんの憩っている部屋も見かけなかったですわねえ」
「そのことです。島を探しあてることが出来たら、そこに何かあなたの疑問を解く手懸りがあるだろうと思っています」
「田川の居る場所は? いや、田川の死骸のある場所といった方がいいかも知れませんが……」
「まず迷路の島を。島が分れば田鶴子の居所が分る。田鶴子に会えば、田川君の所在が分る――と、こういう工合に行くと思うんです」