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せんりがんそのた
千里眼その他
中谷 宇吉郎
「文藝春秋」1943(昭和18)年5月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,478 字 · 26 页
例えば勢力不滅の法則に牴触するような発明は、未知のものであっても、それはやってみるまでもなく、嘘である。それが嘘であって再試の必要がないということが「存在する」ことなのである。
もっともこういう風には言ってみるものの、実際には、一番肝腎な時に、「それはやってみなくても分っている。嘘である」と言い切れる科学者が案外少いことが心細い点なのである。そして更に悲しむべきことは、そういうことを言ってはならない場合に、平気でそれを言う科学者も相当数ありはしないかという懸念があることである。(昭和十八年五月一日)
附記
この千里眼の話を書いたのは、昭和十八年の春のことで、その年の四月号の『文藝春秋』に載せてもらったものである。昭和十八年の春と言えば、大戦第三年目に入り、既にミッドウェーの敗戦、ガダルカナルの撤退によって、戦況既に我に不利に傾き、要路の人たちの焦慮がそろそろ見えて来た頃である。
そういう時期にこんな暢気な話を書くということは、随分妙な話と思われるかもしれない。事実私は読まなかったが、或る雑誌批評で、この千里眼が槍玉に上り、時局をわきまえないとか何とかいう御叱りを受けたそうである。