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うまいち
午市
宮本 百合子
「婦人公論」1922(大正11)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,146 字 · 17 页
おせいは著しい人心の対照を感じずにはいられなかった。
「それでも、この二三年のようなことは、もう当分見られますまいね。あの時分の賑やかさといったら知らない者には嘘のようでしたよ」
彼等は、通りを横切って、間もなく、目先の妙にがらんと開いた場所に出た。薄暗い空地の中に、ぼんやりと門のようなものが立ってい、左手には大きい木造の洋館が見える。燈火の明らかでない様子や、足下の地面が乾いてぽこぽこ砂塵をあげるのが、おせいに何となく、田舎の郡役所などの正面を思い起させた。
小関は、いつも健介夫婦の左側に立ち、少しずつ先に歩いて行く。
「足元が暗うござんすよ。――ここが、所謂公園ですな」
そう云われて見ると、なるほど、躑躅(つつじ)などの植込みを縫う小径や、あっちこっちの空地には、大勢浴衣がけの男女が用もなさそうにぶらぶらしている。白い単衣の背中だけがぼうっと見える木蔭で、パッと燐寸(マッチ)をする。狭い灯かげで、若い者が五六人顔をつき合わせてしゃがんでいるのが見えた。そうかと思うと、何に使うか大きな材木をたくさん積み重ねておいてある上に腰をかけて、さも一大事が起ったらしく、男と女が人目もかまわず月光を浴びて囁き合っている。