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なんぽうものがたり

南方物語

小川 未明

「赤い鳥」1928(昭和3)年9月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 5,065 字 · 11 页

青空文庫

船は、あてもなくただよって、ただ、風がつれていってくれるところへ着かなければなりませんでした。

海の上に、うすく霧がかかって、一日は、むなしく暮れてゆく時分でした。あちらに、赤い火影をみとめたのです。

「火だ、火だ。」

三人は、じっと、それをながめました。急に、元気がわいて、かじを取って、その方へいっしょうけんめいに船を進めるのでした。火は、だんだん近くなりました。小さな燈台のようでした。

「いったい、ここはどこだろう。」

夜の空をすかして見ると、熱帯植物がこんもりと立っていました。そこは、大洋の真ん中にあった、小さな島であることがわかったのでした。

「なんだか、夢のようだな。」と、一人がいいました。

「幽霊島でないかしらん。」

「どこでもかまったことはない。なるほど、このあたりは、岩が多いようだ。沖へ出ている船もいるとみえて、あの赤い火がついているのだろう。」と、もう一人がいいました。

三人は、いつまでもこうしていては、助からないと思いましたから、命がけの冒険をする気で、十分注意しながら、岩と岩の間をこいで、その島に上陸しました。

屋根の低い家が、ところどころにありました。