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なんぽうゆうしん
南方郵信
中村 地平
「文學界 第五巻第四号」文藝春秋社、1938(昭和13)年4月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,899 字 · 42 页
純白な羽毛を引き抜かれるたびに、鶏は身をもがき、首をのばしてけたたましい悲鳴をあげる。
爺さんは眼頭にいっぱい涙をためて、つぶやいていた。
「毛を抜かれるわりもつらかろうが、抜くわしの身はもっとつらか。こんど産れてくる時は鶏どんになってくるではなかど……。なに鳥がよかろか。五彩で美々しか雉どんがよかろ。そいでん、狩人どんに見つかってしまえば、それ迄の命じゃ」
爺さんの繰り言は、まるで耳に入らないもののように、鶏は強く羽ばたきしては舞い逃げよう、とする。
「いっそ、目白がよかろ。目白になって陽なたの丘の竹藪で、日がないちにち啼き暮すことじゃ。そいでん、子供たちにつかまって、籠んなかに入れられてしまえば、また鶏どんと同じ運命になる道理じゃ」
爺さんは少時考えこんでいたが、悲しそうな声でつぶやいた。
「いっそ、こんげ苦しか浮き世には、二度と産れてこんことじゃ」
すると、丁度その時、雌鶏は爺さんの油断を見すまして、荒縄から身をすり脱け、土の上を走りだした。糊刷毛のような白い毛を羽根の先に残しているだけで、全くの丸裸になってしまっている。無花果の樹の根もとから、低く一直線に肥料小舎までとんで行くと、まるで気でも狂ったように、けたたましく叫びたてながら、空に舞いあがろうとした。