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なんきょくのかいじ
南極の怪事
押川 春浪
「中学世界」1905(明治38)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,508 字 · 33 页
波間に飛び込まんとする一刹那、一海賊は猛虎のごとく跳りかかりヤット一声船長を斬りさげたり、船長の躰は真二つに割れ、悲鳴を揚ぐるいとまもあらず、パッタリと倒る、血は滾々と流れて、その辺は一面に真紅となれり、あまりの悲劇に、余は船長の倒れると同時に、思わずアッと叫びしが、ああこの声こそ、余のためには大災難の声なりき。
すでに船員の全部を屠りつくして、もはや船中には人なしと思いいたりし海賊等は、余の声を聴き痛く驚きし様子にて此方を振り向きしが、余の姿を見出すやいなや、悪鬼のごとき眼を光らして口々に何か叫びながら、切先揃えてドヤドヤと押し寄せ来たり、サア大きなり、捕えられてはたまらぬと、余はただちに昇降口の下に首をすくめ、素早く入口の蓋を閉ざせり、その瞬間海賊等ははや入口の周囲に来り、頭上の床板踏み鳴らす足音も荒々しく狼の吼ゆるがごとく、また猿の叫ぶがごとく罵り騒ぐは、ここ開けよ開けよと云うならん、開けては一大事なり、余は両手を伸ばし、死力を出して下より蓋を押えおる、海賊等は上よりこれを引きはなさんとす。幸いこの帆船には船底と甲板との間に、この昇降口一個あるのみなれば、ここぞ余のためにはサーモピレーの険要とも云うべく、この険要破れざる限りは、余の生命続かん、生命のある