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なんきょくのかいじ
南極の怪事
押川 春浪
「中学世界」1905(明治38)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,508 字 · 33 页
船なりと云うに余の好奇心はにわかに動きて矢も楯もたまらず、ただちに端舟を漕いでその舷門に至り、言語通ぜねば手真似をもって便乗をこい、船長の拒むをしいて、二百ドルの金貨を握らせ、ようやく便乗を許されしなり。もとより客室など云う気のきいたものはなければ、余は船の最も底の倉庫のごとき処に毛布を敷き、そこを居室兼寝室と定めしも、天気晴朗なる日はそのような薄暗き処に閉じこもる必要なし、余は航海中の多くを風清き甲板上に暮すつもりにて、一日も早く世人の知らざる南方の絶島に着し、真珠取りの面白き光景を見んと、それをのみ唯一の楽しみとせしが、あにはからんやこの船こそ、余のためには魔の船となりけり。
四
この船は名を「ビアフラ」と云う、余は便乗を許されし翌日正午頃マザガン港を出発せり。針路を南に南にと取って、アフリカの西岸にそい、おりから吹く順風に帆は張り切れんばかり、舳に砕くる波は碧海に玉を降らし、快速力は汽船もおよばぬばかりなり。
そもそもアフリカ西岸の航路は、以前はヨーロッパよりアジアに向かう唯一の航路にして、喜望峯を迂回して行く船の幾度か恐しき目に遭いし事は、今なお世人の記憶せる