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なんがをかくはなし
南画を描く話
中谷 宇吉郎
「中央公論」1941(昭和16)年7月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,968 字 · 24 页
と書いた。こういう文句がすらすらと出るようなら、あるいはラテン語でもよかったかもしれないと思った。
賛といえば、これはなかなか大切なものである。絵の方が巧く行かない時でも、適当な配置を考えて、ちょっとはぐらかすような文句を書いておくと、大抵の人はその方に気をとられるらしい。もっともいつか東京から或る有名な先生と、聡明をもって鳴るその奥さんとが来られて、私の家を訪ねられたことがあった。話のついでに、新一楽帖と自称している自分の画帖を見せた。そしたらその奥さんから「中谷さんの南画というのは、配置と文句で胡魔化しているのね」と言われた。しかしこういう御難に遭うことは稀れで、一般には賛を入れておいた方が通りがよい。
もっといい方法は、誰かに賛を入れてもらうことである。以前から、東京への往き帰りに、時々仙台で下車しては、小宮さんのところで一泊して休ませてもらって来ることがあった。南画が始まってからは楽しみが一つ増えた。墨と判とをもって行って、私が絵を描いて、小宮さんに賛をしてもらうという計略をたてたのである。
昨年の秋、まだ本気に南画を始めてから半年も経たぬというのに、大胆にもすっかり道具を持って仙台へ乗り込んだ。