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なんばんひわもりうこんまる

南蛮秘話森右近丸

国枝 史郎

「少女倶楽部」1927(昭和2)年4月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 55,869 字 · 112 页

青空文庫

香具師共ドッと押し寄せた。

以前程の元気はないのである。民弥は疲労ているのである。そこを狙って多勢の香具師共、一度に寄せて来たのである。危険だ危険だ捕らえられるかも知れない。

だがこの時声がした。

「強いぞ強いぞ侍めは! あぶないあぶない一時逃げろ!」

他ならぬ猪右衛門の声である。

つづいて右近丸の声がした。「お助けいたす、民弥殿!」

バタバタバタバタと足の音! 右近丸のために切り立てられ、逃げて来た猪右衛門の足音である。それに続いてまた足音! 猪右衛門の後を追っかけて、走って来た右近丸の足音である。

と、「ワッ」という数声の悲鳴! 民弥をグルグルと取り巻いていた香具師の群から起こったが、これは馳せ付けた右近丸が、太刀を揮って背後から、二三人を切って倒したのである。

当然香具師の円陣が崩れ、バラバラと四方へ別れたが、四ツ塚の方へ走り出した。

つと現われたは右近丸、「おお民弥殿!」

「右近丸様!」

「どこもお怪我は?」

「ございませんでした」

力が抜けたのか娘の民弥が、グッタリと右近丸へもたれるのを、胸で支えて左手で抱き、右手に握った血刀を、グーッと高くかざしたが、右近丸大音に呼ばわった。