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なんばんひわもりうこんまる
南蛮秘話森右近丸
国枝 史郎
「少女倶楽部」1927(昭和2)年4月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 55,869 字 · 112 页
だが恐れない二人であった。サーッと上へ駈け上る。
と、一つの辻へ出た。森林の中に八本の道が、全く同じ形をとり、八方へ延びているのである。
と、一方から声がした。「こっちだこっちだ、こっちへ来い!」
そこで二人はひた走った。とまた一方から声がした。
「こっちだこっちだ、こっちへ来い!」
そこで二人は方向を変え、声のする方へひた走った。
とまた一方から声がした。「こっちだこっちだ、こっちへ来い!」
そこで二人は方向を変え、声のする方へひた走った。
すると今度は八方から、嘲ける声が聞えてきた。「こっちだこっちだ、こっちだこっちだ!」
怒りを発した右近丸は今は平素の思慮も忘れ、ひたむきに一本の道を辿り、サーッばかりにひた走ったが、ハッとばかりに気が付いて立止まって背後を振り返ったが、「南無三宝! 民弥殿が見えぬ」
――民弥とはぐれてしまったのである。
さてその翌日のことである、一人の女が物思わしそうに、京都の町を彷徨っていた。
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ほかでもない民弥である。
どうしてさまよっているのだろう?
右近丸を探しているのであった。
それは昨夜のことであったが、洛外北山の山の中で、不思議な迷路へ迷い込み、気が付いた時には右近丸の姿は、どこへ行ったものか見えなかった。