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なんばんひわもりうこんまる

南蛮秘話森右近丸

国枝 史郎

「少女倶楽部」1927(昭和2)年4月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 55,869 字 · 112 页

青空文庫

「そうとも知らず連れ込まれたは、妾の油断には相違ないが、ムザムザ手籠に逢うものか! 武士の娘だ、あなどってはいけない!」

壁を背後にピッタリと背負い、褄を片手にキリキリと取り上げ、振り冠った懐刀に波を打たせ、荒くれ男の十数人を、睨んだ様子というものは、若くて美しい娘だけに、凄くもあれば立派でもあった。

驚いたのは人買共である。

23

一整に立ち上ったが呶鳴り出した。

「油断をするな、大変な娘だ!」

「一度にかかって手捕りにしろ!」

「相当武芸も出来るらしい。甘く見込んで怪我するな」

そこで一同ダラダラと並び、隙を狙って飛びかかろうと、民弥の様子をうかがった。

飛び込んで来い! 叩っ切る! 敵わぬまでも防いで見せる! そうして一方の血路をひらき、この屋敷から逃げて見せる! ――民弥は民弥で決心を固め、四方へ眼を配ったが、敵は大勢、民弥は一人、多少武芸の心得はあるが、腕力では弱い女である、助太刀する者がなかったら、ついには手取りにされるだろう。そうなった日には最後である。他国へ売られてしまうだろう。

父は何者かに殺されてしまった。手頼りに思った右近丸は、どこへ行ったか行方が知れない。