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なんばんひわもりうこんまる
南蛮秘話森右近丸
国枝 史郎
「少女倶楽部」1927(昭和2)年4月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 55,869 字 · 112 页
だからよ民弥さん堪忍しておくれよ。ね、ね、ね、昔の罪はね! ……そりゃアそうとどうもいけない。だんだん足音が近くなって来る」
民弥は無言で走って行く。民弥には全く不思議であった。
何が何だか解らなかった。猿若というこの小供が、何故自分を助けたのか? そうしてどうしてこの小供が、自分の名などを知っているのか? いやいや決してそればかりではない、逝くなった父の弁才坊のことや、そうして人形のことなどを、どうして口へ出すのだろう? ――何も彼も民弥には解らなかった。だがただ一つ解っていることがあった。それは自分のあぶない所を、助けてくれたということである。で民弥は心から、有難く思ってはいるのであったが、口へ出しては云わなかった。と云うのはうっかり声を出して、そのため呼吸でも乱れたら、そのまま倒れてしまうだろうと――こういう不安があったからである。
で、黙ったままひた走る。
だが精力には限りがある。だんだん二人は疲労てきた。足の運びも遅くなり、胸が苦しく呼吸が逸む。
「ああもう妾は走れない」
民弥がこう云って足を止めた時、人買の追手が追い逼った。
すぐに民弥と猿若とを、グルグルと包囲したのである。