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なんろ

南路

宮本 百合子

「太陽」1922(大正11)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,813 字 · 63 页

青空文庫

閉って、飾窓だけ開けた店舗の前を、身分相当に小ざっぱりとした人が、喋り、笑いして、ぞろぞろ通る。日曜の市街は人と人とが見あい見せ合う、流行の陳列館になってしまうのである。そういうことが厭な人々は、遠い郊外に出て行く。――

この市でも、相当な人は皆郊外に遊びに出かけるのだろう。また、亜米利加(アメリカ)でも理想的な自動車道を持っているといわれるほどだから、多くの人は、いつも山や野から健康な呼吸の出来る住宅地に集まっている故か、新らしい眼で見たロスアンジェルスの日曜は、まるで、田舎者と、我々のような旅行者に明け渡された市街のように感じられた。

かなり大きな電車の発着所にも、何等かの意味で緊張した顔が満ちている。三十分か、四十分間を置いて出る電車には、皆、始めて或る処に行くというような人が積み込まれる。私共も、その中に入って、狭く雑沓した街から、次第に家の疎らな、市の外廓に連れ出された。

朝、確に通ったと思われる踏切りの近くには、たくさん日本人の顔が見える。

耕地や、なだらかなオレンジの丘、はっきりした連山の遠景などは、実に見る眼を楽しませる。東海道の景物を、もっと透明な万遍ない日に輝やかせ箇々の内容を、数倍、大まかに、輪廓の線をくっきりと印象的にしたのが、この辺の景色であるといえよう。