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なんろ
南路
宮本 百合子
「太陽」1922(大正11)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,813 字 · 63 页
いわゆる問題は、日常生活のうちに織り混り、市街の空気中に浮動して、自分のような旅行者まで、その影響を蒙らせられるのである。
何となく両方で気にしている。癪に触る奴等だと腹の底では思っている。それが、ともかくも、緊張して平気を装い、横目でじろり、じろりと、隙を狙って素早く利益を獲得しようという気分が、浅間しく漲っているのである。
条理の立たない、無智な者同志の反感ほど、見る目に苦しいものはない。暖く朗らかな街の大通りを、襟飾(ネクタイ)もなければ、カラーさえつけない日本の男が、故意(わざ)とのように肩を聳かし、靴を引ずり、四辺を眺めて通って行く。通行人は、皆、ぺっ! という顔をする。
市街の一廓に入った者は、日本の移民が、いかほどの執着を以て集合し、彼奴等は奴等、己は己達、という生活をしているか、驚かずにはいられないだろう。
もちろん、英語などは読めも書けもせず、日本字の看板をかけた理髪屋で髪を切り、「一寸一杯」と提灯を下げた飯屋で食事をする。
自分がいやなのは、彼等が百姓だからでもなく、「たくさん子供を産む勤勉家」だからでもない。若し、彼等が、皆、人間らしい大様さと朗らかさと自信とを持った自由労働者なら、私は、心から手を差し延ばして、他国で廻り遭った悦びを述べるだろう。