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なんぶのはなまがり
南部の鼻曲り
久生 十蘭
「新青年」1946(昭和21)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,683 字 · 25 页
ともかく、それだけは助からないから、そういう場合、おれとわからないですむようにむやみに髯を伸ばしておいた。
フィリッピンではとうとうモオリーに出逢わなかった。おれの左脚を四分の三ほど短くしたのはモオリーでないべつのアメリカ人だった。
戦争がすみ、アメリカ人が勝者として日本へ乗りこんで来た。おれはモオリーに逢いたかった。おれを足蹴したやつがどんな立派なアメリカ人になったか、日本の秋晴れの中でつくづくと見届けてやりたいのである。おれがなんとか局の通訳を買って出ていそがしくやっているのは、そうでもしたらモオリーに逢う機会がすこしでも多くなるかと思ったからに外ならない。それでモオリーに逢ったのか。
お前は小説家らしくもないことをきく。逢わなかったらこの話のまとまりがつかんじゃないか。逢ったとも、もちろん逢った。それも真っ昼間、神宮外苑の芝生の上で逢った。
美術館に向って右側の欅の樹の下で、足を投げだして煙草を喫っているのはどう見てもたしかにモオリーなので、おい、なにをしてるんだ、と声をかけると、モオリーは振り返りもせずに、
「None of your business!」