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いんしょう

印象

小酒井 不木

「新青年」博文館、1926(大正15)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,142 字 · 17 页

青空文庫

頬が痩せこけて皮膚に光沢がなく、一目見たとき私は別人ではないかと思いました。

診察をすると、夫人はやはり妊娠九ヶ月の身重でしたが、それと同時に夫人は肺結核に罹って居たのであります。胎児の位置は正常で、分娩そのものに危険はありませんでしたが、肺結核は明かに進行性のものでありました。ことに心臓が可なりに衰弱して居て、一日も早く妊娠を中絶しなければ、母体がとても分娩まで持つまいと思われました。

そこで私は人工早産の必要を告げますと、夫人は別に驚く様子もなく、妊娠三ヶ月頃から結核にかかり、内科医に診てもらうと、内科医は頻りに妊娠の人工的中絶をすすめてくれたが、事情があって、たとえ、自分は死んでもお腹の子を無事に産み落したいと思って今日まで暮して来たけれど、二三日非常に胸が苦しくなって、急に身体が衰弱して来たから、若しやお腹の子に影響しはしないかと心配になったから、診察をお願いしたのだということを語りました。

「先生、お腹の子は無事でしょうか。無事に生れてくれるでしょうか」と、夫人は仰向のままうるんだ眼をして、私の顔を心配そうに見つめながら訊ねました。

「お子さんは無事に育って居ます。