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また、いえ

又、家

宮本 百合子

「宮本百合子全集 第十八巻」新日本出版社、1981(昭和56)年5月30日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,120 字 · 13 页

青空文庫

彼方此方歩いて居るうちに、先ず樹木のあるのが私を悦ばせ始めた。屋根は仮令トタン葺きでも、家全体が古物でも、眺め、自然を感じる植物の多いのはよい。内部は、翌日の午後でなければ見られないことになって居た。

「どう?」

自分は、手を入れて低く仕立てた八つ手の傍に立ってAに訊いた。

「どうだね?」

彼が反問した。

「随分ひどいらしいけれども――樹だけはいいわね」

「手を入れればよくなるさ。どうせ、そう万事よいと云う処はない。第一此処からだと、学校までたった二三分で行けるもの――」

「――きめましょうか?」

彼は、又、ぶらぶらと四辺を歩いた。

「――定めたらどうだね、明日内部を見て。」

私も、知らず知らずもう一度大体の模様を見た。気が付かなかったが、表の建仁寺の処には、蔦が房々とまといついて居る。

「――定めましょうか」

「そうしよう。ね。家のこまこました処はいくらでも追々なおせるもの、あっちから見たら、樹の多い丈でも幾何いいか知れやしない。」

他にも、懇望して居る人があると云うので、Aは気が気でないらしく見えた。全く位置を云えば、又と此位近所に見当ろうとは思えない。

彼は、その晩も、牛込まで行った。