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はんこう
反抗
豊島 与志雄
「国民新聞」1921(大正10)年8月4日~11月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,121 字 · 282 页
そして最後につけ加えた。「私はどう考えても、あなたから叱られるような訳はないと思っています。」
「いつ私があなたを叱って?」と保子は云った。
「でも腹を立てて非難するのは、叱るのと同じじゃありませんか。」
「私ちっとも腹を立ててやしないわ。けれど、こちらの気持をそのまま受け容れて貰えないのは、不快なことじゃなくって?」
「それはそうですけれど、いくら気持は分っていても、はっきりした言葉がなければ困ることもあるんです。」
「お金のことがそうだと云うんでしょう。だからあなたは素直でないのよ。お金ということにいやにこだわるのは、あなたに僻みがあるからよ。」
そう云われてみれば、彼は一言もなかった。困難な生活をしてる余り、金銭に対して妙に神経質になるのは、一種の僻みからであるかも知れなかった。然しそればかりでもない、と彼は考えた。そして云った。
「然し金銭問題は、一番厭な不快を招くことがありますから。」
「それがあなたの僻みよ」
そう押被せられると、彼は口を噤むより外仕方がなかった。黙ってると、保子は暫くしてこう云った。
「分って?」
彼は顔を挙げた。自然に澄みきった彼女の眼とやさしい顔とが、すぐ前に在った。