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はんこう
反抗
豊島 与志雄
「国民新聞」1921(大正10)年8月4日~11月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,121 字 · 282 页
夢の中の女にでも呼びかけるような心地だった。現実と夢との境がぼやけてしまった。眼覚めてるのか眠ってるのか分らない気持だった。何かをしきりに考えてるのが、いつのまにか悪夢のような形を取り、そしてうとうとしてるかと思うと、またはっと眼覚めた、そういうことを何度もくり返した。
二十二
周平がはっきりした意識に返った時、室の中は薄暗かった。電燈が消えて雨戸の隙間から明るい光りが洩れていた。彼は驚いて飛び起きた。雨戸を一枚開くと、朝日の光りがさっと浴せかかった。彼はくらくらとした眼を閉じて、それをまた開いた。東の空に太陽が昇っていた。その強い光りに縫われて、薄い靄が低く流れていた。
彼はその景色に暫く見とれていた。それから深く呼吸をした。日の光りの下で考えると、前夜のことが頭の奥へ潜み込んでしまった。そしてただ、万事終ったという捨鉢な気持だけが残った。
彼は室を片付けて、階下に下りていった。
保子はもう起きていた。彼の顔をじっとみながら云った。
「相変らずの寝坊だわね。」
周平は弁解しようとした、昨晩よく眠らなかったからだと。然しその言葉が喉につかえて出なかった。