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はんこう

反抗

豊島 与志雄

「国民新聞」1921(大正10)年8月4日~11月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,121 字 · 282 页

青空文庫

頭の中で考えめぐらしたことが、実際に当っては如何に無力なものであるかを、周平は知った。進むか退くかの問題に於て、自分の態度を定める問題に於て、その時々に考え決意したことは、実は、その時々の気分に過ぎなかった。気分が異るに随って、考えもすぐに変っていった。その間に、事実はぐいぐい進んでゆく、凡てを引きずって進んでゆく。そして何処まで進もうとするのか?

周平は、考えると恐ろしくなった。横田と保子と隆吉とを前にして、自分の地位を顧みると、このままでは済みそうになかった。而も自分の意志が無力だとすれば、どうすればいいのか。眼に見えてる破滅を避けるためには、事実の進みを多少なりと正しい方向へ導くためには、もはや、思いきってぶつかってゆくの外はなかった、先へつきぬけるの外はなかった。焦慮しながら事実の後へくっついていくのは愚の至りだった。

彼は大胆に凡てを取り容れようとした。元通り、毎週一回隆吉の質問に応じに来た。横田や保子に対して、あらゆる気兼ねを打捨てながら、平然と――図々しいほど――振舞った。そして遂には自分の心が、強い力のうちに支持されてるのか、或は捨鉢に投げ出されてるのか、彼は自ら分らなくなった。