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はんこう

反抗

豊島 与志雄

「国民新聞」1921(大正10)年8月4日~11月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,121 字 · 282 页

青空文庫

知ってるふりをして、声高く笑ってやった。

とはいえ、そのために却って、変に気持の上のこだわりが残された。

彼は後でそのことを、その晩居合せなかった村田に尋ねてみた。

「君はまだ知らないのか、あの有名な話を。」と村田は云って、周平の顔を見返した。

「知らないから聞くんだよ。」

「いやに気にしてるな。だが実際、ただで聞かせるのは惜しいほど面白い話だぜ。実はね、竹内があのお清に一寸参ったって訳さ。それから度々あの家へ行って、それとなく当ってみたんだ。所がさっぱり手答えがないんだろう。先生じれだしたもんだ。そして、止せばいいのに、酒に酔ったふりをしては、怪しげな詩だの歌だのを書いてよこしたのだ。全く気障な奴さ。その上に常識を逸してるね。だが、それだけ先生の方じゃ大真面目だったんだろう。それでも向うは平気で、知らん顔をしていたんだ。そして愈々最後のカタストロフって幕さ……と云っても、それは勿論喜劇だがね。」

周平は黙って聞いていた。

「或る晩、竹内はさんざん酔っ払って、或は酔ったふりをしてたのかも知れないが、あの女を捉えて、手帳と万年筆とを――そんなものをいつも持って歩いてる奴なんだ――それをつきつけて、これに何か書けと膝詰談判を始めたものだ。