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はんこう

反抗

豊島 与志雄

「国民新聞」1921(大正10)年8月4日~11月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,121 字 · 282 页

青空文庫

」と彼女は云った。

「君の方が黙ってるじゃないか。」

「あなたの所へ来ると何だかしんみりしちゃうのよ。」そして彼の眼をちらと覗き込んで、急に早口で云った。「余り他で饒舌り疲れたせいかしら。」

「そんなら、疲れたらいつでもやって来るさ。」

「そうね。」

と云いながら彼女は、何処にも疲れた風はなく、暫くするとまたすぐに室を出て行った。

お清が出てゆくと同時に、周平は立上って室の中を歩きだした。卓子のまわりを二三回した後、また椅子に腰を下ろして火鉢にかじりついた。

室の空気が冷たかった。彼の心も冷たくなっていた。白い天井の方だけが明るくて隅々が薄暗く思われる、裸壁の狭い室に、一人取残されたような自分自身を見出すのが、堪らなく淋しかった。お清を前にして酔っ払ってゆくことは、捨鉢な好奇な気持を煽り立てる力となったが、お清が室から出ていった後は、どうにも出来ない淋しさに囚えられた。その淋しさをじっと我慢してると、もう身動きをするのも厭なほど気がめいりこんでしまった。

暫くしてお清がまたやって来ても、彼は火鉢の上に伏せた顔を挙げなかった。

「どうしたの……怒ってるの?」