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はんこう

反抗

豊島 与志雄

「国民新聞」1921(大正10)年8月4日~11月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,121 字 · 282 页

青空文庫

竹内が自分を避けてる理由がはっと胸に響いた。向うがそのつもりならこちらは反対に出てやれという気になった。そして彼はお清が来るのを待った。然し彼女はなかなかやって来なかった。彼は更にじりじりしてきた。残りの料理と酒とをみんな平げてしまった。それから長椅子の上に寝そべった。頭がかっとしてきた。

彼はお清がそっとはいって来たのも知らなかった。「あら、寝てるの、」という声に飛び起きると、彼女はすぐ彼の前に立っていた。

「まあここに坐れよ。」と彼は怒鳴りつけるように云った。

お清は黙って椅子に掛けたが、何だか興奮してる様子だった。身体を固くして、口をきっと結んでいた。小さな唇に小皺が寄っていた。周平は一寸気勢を挫かれた気持で、低く尋ねてみた。

「向うに来てるのは竹内だろう。」

お清は何とも答えないで、ちらと彼の眼を見返した。

「おい、竹内だろう。」と周平はまた尋ねた。

「ええ、そうよ。」

事もなげに答えておいて、お清は急に彼の方へ向き直った。

「あなた、竹内さんと喧嘩でもしたの。」

「なぜ?」

「だって、いやに気にしてるじゃないの。」

彼は何とも答えないで空嘯いてみたが、ふと、先刻自分がしたように、竹内が向うからこちらの様子に耳を澄してるに違いないと思うと、それが気になって落着けなかった。