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はんこう
反抗
豊島 与志雄
「国民新聞」1921(大正10)年8月4日~11月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,121 字 · 282 页
二人は縁側の障子を閉めて、ぼんやり雨音に耳を傾けた。心は他に在った。
「それから、」と村田はやがて語り続けた、「吉川さんの母親と子供――即ち祖母と孫とは、悲しい日を過した。お祖母さんにとっては、その子供が推一の慰藉であり、子供にとってはお祖母さんが唯一の頼りだった。そしてお祖母さんは、子供を育て上げることに残りの一生を捧げたのだ。
「この二人に次で、吉川さんの死から可なりの打撃を受けたのは、横田さんと保子さんとだった。直接関係はないけれど、心には可なり響いたらしい。それでも横田さんの方は、云わば勝利者なんだ。勝利者が敗北者の破滅に対して懐く同情は、勝利者にとって、いつでもさほど高価なものではない。然し保子さんの方は、心の奥に一種の傷を受けざるを得なかったのだ。たとい当面の責任者ではなくとも、間接の責任はある筈だ。……そういう訳で、二人の愛情は吉川さんの死から毒された。然し愛情というものは、傷ついた獣のように、痛手を受ければ受けるほど、益々激しく狂い廻るものなんだ。横田さんと保子さんとは更に深く結びついたらしい。そして、吉川さんの一周忌がすんだ翌年の春、結婚して新らしい家庭を持ったのだ。