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はんこう

反抗

豊島 与志雄

「国民新聞」1921(大正10)年8月4日~11月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,121 字 · 282 页

青空文庫

そのことだって、何か考えがあってのことだろう。或は保子さんのあの生一本な性情から出たことかも知れない。それは兎に角として、横田さんの申出をお祖母さんは非常に喜んだ。そして子供は横田さんの家に引取られた。それがあの隆ちゃんなんだ。お祖母さんの方は、或る下町の、何でも株屋の主人とかいう話だが、そこの女中の取締みたいにして雇われてるそうだ。針仕事が非常に上手なので、殊に重宝がられて、わりに幸福だとかいう話だった。」

村田が話し終えるまで、周平は注意深く聞いていた。うっかり信用出来ないぞという気がした。村田の話には余りに主観的の分子が多かった。説話と註解とが同じ位の分量になっていた。そして肝要な点が妙にぼやけてるくせに、或る部分は余りに深く立ち入りすぎていた。

「どうして君はそう詳しく知ってるんだい。」と周平は尋ねた。

「吉川さんの家と親しくしていた人があって、僕はその人から直接に聞いたことなんだ。確かな事実だ。……ただ、心理の方面のことは、分り易くするために僕が解釈を下したんだが、全く事実に即しての上だから、間違いはない。」

確信の調子で得意然としてる村田の顔を、周平は暫くじっと見戍っていた。