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はんこう

反抗

豊島 与志雄

「国民新聞」1921(大正10)年8月4日~11月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,121 字 · 282 页

青空文庫

然し予習は、子供自身にうち任したがいい。たとい間違った解釈にせよ、子供自身の解釈を持って教室に臨ませるのが、教室の中を最も溌溂たらしめる所以である。そう周平は信じていた。それで彼は、学校でまだ教わらない部分に就ては、少しも隆吉に教えることをしなかった。然し隆吉は優秀な生徒だった。学校で教わったことはよく頭にはいってるらしかった。……彼はすらすらと読本を読んでいった。それでも一寸した間違いをすることがあった。周平は待ち構えていた。先刻からの小憎らしさの念が積っていた。その間違いを取り上げて、怠慢だと責めつけてやった。隆吉は平気だった。

「知ってるんだけれど、一寸間違ったんだもの。」

周平は更に追窮してやりたかった。然し自分の大人げないのを顧みて止した。そして、二人の前には三四十分の無駄な時間が残った。週に一時間ばかりとの約束だった。それは実際、保子が云ったように、ただ名目だけの家庭教授だった。

周平は勝手な図画や習字などで時間をつぶしたかった。然し隆吉はそれを好まなかった。いろんな話を聞きたがった。それをまた周平は好まなかった。じゃ歴史の詳しい話をしてほしい、と隆吉は云い出した。