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はんこう

反抗

豊島 与志雄

「国民新聞」1921(大正10)年8月4日~11月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,121 字 · 282 页

青空文庫

十三

周平が一人で思い惑ってるうちに、いつしか暑中休暇になった。そして、八月はじめから約一ヶ月余りの間、横田の家は家族全部で――と云っても、横田夫婦と隆吉、それに女中が一人伴して――常陸の海岸へ避暑することになった。其処に、水戸に居る親戚の別荘があるのだった。

不在中は女中一人きりだった。それが不用心だというので、周平は留守居を頼まれた。

「ね、いいでしょう。」と保子は云った。「下宿の狭い室でごろごろしてるよりは、家に来て勝手に寝転んでいらっしゃいよ。それにまた、下宿に居るとすれば、高い室代や食料を払わなければならないでしょう。わざわざ苦しんでそんな不経済なことをしなくてもいいわ。ねえ、そうきめとくわよ」

「だって……。」と周平は呟いた。

「何がだってなの。……男って決断力の鈍いものね。私はもうそれにきめてるのよ。井上君にも種々都合があるだろうからって横田が云うものだから、一寸相談することにしたの。けれど、もうきまってることなのよ。」

周平は苦笑しながら、兎も角も承諾した。実際の所、暑い中をすることもなくて下宿に転がってるよりは、広い家に留守居をしてる方がずっとよかった。