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はんこう
反抗
豊島 与志雄
「国民新聞」1921(大正10)年8月4日~11月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,121 字 · 282 页
室の隅に寝転んだり、庭を歩いてみたりした。凡てが珍らしかった。
然し、一週間もたつうちには、その珍らしさがなくなって、室の中の様子から庭の隅々まで知りつくすと、とりとめもない漠然とした空虚を覚えだした。
友人等は大抵東京を離れていたし、東京に残ってる者等には、横田の家で暑中を過すことを知らしていなかった。横田一家の不在中に、友人等を集めて勝手なことをするのは、何となく憚られたのである。それで、村田と野村とが各一度訪ねてきたきりだった。其後村田は旅に出ていた。
周平は為すこともなくぼんやり日を過した。自由にしていいと云われていた書棚から、書物を取って読んでみたが、少しも気乗りがしなかった。退屈だった。退屈を通り越して妙に頼りなかった。この心の不満は何処から来るのか、と彼は自ら尋ねてみた。然し実はその原因を知っていた。知っていながらそうだと認めたくなかったのである。
昼間はそうでもなかったが、夜になってあたりが静まると、彼はいつのまにか保子のことを考えていた。それが、今は亡い遠い昔の人を偲ぶような心地だった。彼は記憶の中を探って、彼女の姿をはっきり其処に現わそうとしていた。