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おじとおいと
叔父と甥と
岡本 綺堂
――甲字楼日記の一節――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,487 字 · 5 页
あまりに女々しとは思いながらも、哀傷の情いまだ癒えがたきを如何にすべきか。
唐がらし鬼に食はせて涙かな
家に帰れば、留守の間に経師屋来りて、障子を貼りかえてゆく。英一のありし部屋、俄に明るくなりたるように見ゆるもかえって寂し。
小春日や障子に人の影も無く
十一月二日、明治座の初日、わが作『小栗栖の長兵衛』を上場するに付、午頃より見物にゆく。英一世にあらば、僕も立見に行こうなどいうならんかと思いやれば、門を出でんとしてまた俄に涙を催す。
顔見世に又出して見る死絵かな
五日、英一の四七日、午後よりかさねて青山にまいる。哀慕の情いよいよ切なり。
わが涙凝つて流れず塚の霜
その帰途、青山通りの造花屋にて白菊一枝を買い来りて仏前にささぐ。まことの花にては、その散り際にまたもや亡き人の死を思い出ずるを恐れてなり。
散るを忌みて造花の菊を供へけり
大阪の大西一外君と尾張の長谷川水陰君より遠く追悼の句を寄せらる。
行秋やそのまぼろしの絵を思ふ 一外
秋風や樹下に冷たき石一つ 同
虫は草に秋のゆくへをすだく哉 水陰