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おじ
叔父
豊島 与志雄
「改造」1925(大正14)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,585 字 · 24 页
ああなるものかな、と考えながら中野さんは二人の後を見送った。
それから、中野さんは茶の間に引返してきて、家事万端をみてくれてる年取った女中に尋ねた。
「どう思う。」
「え?」と女中は怪訝な眼付をした。
「あの男をさ。」
「立派な方じゃございませんか。」
「ふむ、そうかな。すると……手の大きいのは玉に瑕というわけか。」
「え? 手の……。」女中はまた怪訝な眼付をした。
「ははは、まあいいさ。」
だが、中野さんはひどく不機嫌になった。不機嫌を通り越して苛立たしい気持にまでなった。
「あんな奴が喜代子を……。」
独語しながら、恐ろしい顔付で唇を噛んだ。
十二月にはいって急に寒くなった。十日頃から、降りきれないでいる陰欝な雪空が毎日続いた。
その或る日、中野さんに会社へ電話がかかってきた。笹部という名前を聞いて、中野さんは一寸思い出せなかったが、それと分ると、急いで受話器を耳にあてた。相手は喜代子だった。至急お願いがあるが、今晩伺ってもよいかということだった。よろしいと答えると、電話はすぐに切れた。
中野さんは眉をひそめた。用件の内容が更に見当つかなかった。夕方からぽつりぽつりと、雨交りの綿のようなのが降り初めた。