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おじ

叔父

豊島 与志雄

「改造」1925(大正14)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,585 字 · 24 页

青空文庫

笹部もどんなに喜ぶでしょう。」

「いや、そう一人ぎめにしたって……少し考えなくちゃあね。」

「だって何にも考えることなんか……ほんとにあたし達困ってるんですの。それが出来なければ、どうにもならないんですから。」

「ほんとうかね。」

「ええ。あたし叔父さまには、何にも隠してや……嘘を云ってやしませんわ。」

喜代子の美しい顔が引きしまって、それから渋めた泣き顔になりそうなのを、中野さんは喫驚したように眺めた。

だが、笹部の奴、あの大きな手をして……。

中野さんはふいに真面目な調子で云った。

「場合によっては、わたしが引受けてやらんこともないが、一度笹部君と一緒に来てごらん。よく笹部君から話を聞いてからのことにしよう。お前達のことについては、わたしにも或る種の責任があるように思えるんでね。」

「笹部と一緒に……そんなことを……。」

「遠慮することはないさ。……お前を信用しないというのではないが、一寸笹部君にも逢っておきたいんでね。」

「だって、叔父さまは、あたし一人ではいけないと仰言るんですの。」

「そうじゃない。誤解しちゃあ困るよ。余りお前達が寄りつかないから、こんなことでも口実にしないとね。