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とりかえしものがたり

取返し物語

岡本 かの子

「大法輪」1934(昭和9)年11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,882 字 · 28 页

青空文庫

蓮如上人の弟子竹原の幸子坊は椽に腰掛けている。)

源右衛門『夜更けといい斯かる荒家へ、お上人さま直々のお運び、源右衛門冥加の至りに存じます』

蓮如『何の、何の、わしじゃとてそう勿体振ってばかりは居らぬ。次第によっては何処へでもいつ何どきでも出向きますわい。これがまた当流易行の御趣旨でもあるからのう』

源右衛門『恐れ入りましてございます。御用の筋は』

蓮如『源右衛門。そなたは開山聖人さまの御影像に就いて何か噂を聞き込みはせぬか』

源右衛門『そのことでございます。只今もばばと話して歯噛みをして居ったところでござりました。三井寺方の申条によれば、門徒宗の方に於て開山聖人さまの御影像を取戻し度くば、生首二つ持参いたせ。それと引換えに渡してやろうと、かような返事との噂を聞きました。お上人さま、そりゃ本当でござりますか』

蓮如『すでに存じておる以上隠し立てもなるまい。三井寺方の返事は全くその通りじゃ』

源右衛門『まさかと思って聴き居りましたに、では本当でござりまするか。如何に乱れた世の中とは言いながら、引換えの料に人の生首。こりゃ無理難題を言いかけて御影像を返さぬつもりとしか受取れませぬ』