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とりかえしものがたり
取返し物語
岡本 かの子
「大法輪」1934(昭和9)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,882 字 · 28 页
十八歳。
円命阿闍梨 三井寺の長老。
三井寺の法師稚児大勢。
その他、村の門徒男女大勢。
第一場
(山科街道追分近くの裏道。冬も近くで畑には何も無い。ところどころ大根の葉の青みが色彩を点じている。畦の雑木も葉が落ち尽し梢は竹藪と共に風に鳴っている。下手の背景は松並木と稲村の点綴でふち取られた山科街道。上手には新らしく掘られた空堀、築きがけの土塀、それを越して檜皮葺きの御影堂の棟が見える。新築の生々しい木肌は周りの景色から浮き出ている感じ。柱五十余木を費し、乱国にしては相当な構えの建築物の棟である。花道から舞台を通って御影堂の塀横に行きつく道は造営の材料を運ぶ為めに新しく造ったもので、里道よりはやや広く、路面に人々の踏み乱らした足跡、車の轍の跡が狼藉としている。使い残りの小材木や根太石も其の辺に積み重ねられている。遠景、渋谷越の山峰は日暮れの逆光線に黝んでいる。)
開幕。土地の信徒で工事手伝いの男女の一群上手よりどやどやと出て来て舞台の下手へ入る。中の三四人、序に運んで来た材木切れをそこに置き、身体の埃を打ち叩き、着物をかい繕ろいなどしつつ作業を仕舞ったしこなし。