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とりかえしものがたり

取返し物語

岡本 かの子

「大法輪」1934(昭和9)年11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,882 字 · 28 页

青空文庫

それで十年前に北国へお立退きの際、お預けなされた三井寺の方へ此の間じゅうからさいさい掛合われなされたけれど、一向取戻しは埒明かんと言うことじゃ』

信徒二『そりゃ初耳じゃ。どうして返さんのじゃろ。どだい、こっちゃのもんやないか。利息でも呉れと言うのか』

信徒一『こまかいことは知らんが、何でもややこしい難題やそうな。それで御上人さまも亦、おひと苦労じゃそうな。然しそんなことをおれ達がかれこれ気を揉んでも始まらんこっちゃ。ものは分け持ちや、おれ達は持分の御普請に精出すのが何より阿弥陀さまへの御奉公じゃ。おっとそう言うてる間に日が暮れて来た。さあ、もう往のう往のう、明日はまた朝早いぜ』

信徒二『御影像を返さんとはけしからん三井寺のやつじゃ。どないして返さんのや。あれはもともと……』

信徒みなみな『まあええ、われが心配することは無い。往のう往のう』

(一同下手へ入る。花道よりおくみ、風呂敷包を抱え宿入り姿で出て来る。屈托の様子。)

おくみ『ああ、焦れる、焦れる。これではわたしの年に一度の奉公休みも台無しだ。お上人さまにお目にかかりに行けば、お上人さまはおいでなされず。