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くちぶえをふくぶし
口笛を吹く武士
林 不忘
「サンデー毎日」1932(昭和7)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,467 字 · 21 页
二
垣見吾平、左内の大石父子と、小野寺十内は、初対面らしくよそおって、それぞれ身分を明かしなどしてから、道中の話しや、これから下って行く江戸の噂や、わざと大声に、雑談に耽っていた。
すこし離れた、はしご段のとっつきの小暗い一間から、
「だからよ、いわねえこっちゃあねえ。そう毎晩、毎晩、首根っこの白い姐やと酒じゃあ、帰りの五十三次が十次も来ねえうちに、素寒貧になるのあ知れきってるって――やい、すると手めえは、何と吐かしゃがった。行き大名のけえり乞食が、江戸っ児の相場だ? べらぼうめ、これから品川へへえるまで、水だけで歩けるけえ。金魚じゃあるめえし――。」
「まあ、兄い。そうぽんぽんいうなってことよ。勘弁してくんな。その代り、おいらが明日から、おまはんの振り分けも担いで歩かあ。坊主持ちじゃあねえ。ずっと持ちだぜ。そんなら、文句ああるめえ。」
と、さかんに高声を洩らしている、お伊勢詣りの帰りと見える熊公、がらっ八といった二人伴れが、いかにもそれらしい拵えの大高源吾と、赤垣源蔵なのだった。
と思うと、中庭をへだてた向うの部屋では、
「はい。拙などの医道のほうも、お武家さまの武者修業と同じことで、こうして諸国を遍歴いたしまして、変った脈をとらせていただきますのが、これが、何よりの開発でござりましてな――。