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くちぶえをふくぶし
口笛を吹く武士
林 不忘
「サンデー毎日」1932(昭和7)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,467 字 · 21 页
」
もう、止むを得ないと見て、新六は、押入れのほうへ行った。そこに、武林のと二本、道中差が置いてあるのだ。
変な侍が押し上ったので、心配してついてきた宿の番頭や女中たちのおどろいた顔が、廊下からのぞいていた。かれらは、武林と狂太郎の白眼みあいと、そして、新六が刀のあるほうへ行ったので、ぱっと逃げ散った。
二
しかし、どっちも刀を抜きはしなかった。間もなく、佐原屋の亭主と、同宿の長老というわけで、垣見吾平、小野寺十内、村松喜平などがその部屋へやって来て、二人のために、狂太郎のまえに頭を低げた。
狂太郎は、長いあいだ一同の顔を見まわしていたが、
「うむ。そうか。いや、大事の前の小事だからな。」
と欠伸まじりにいって、どんどん梯子段を下り、佐原屋を出て行った。
「斬ったほうがいい。」
唯七が、刀を引っ提げて起とうとするのを、垣見吾平がとめたとき、下の往来から、小鳥の啼くような不思議な声が聞えて、それがだんだん遠ざかって行った。狂太郎は、口笛を吹きながら、立ち去って行くのだった。口笛というものを、この人たちは、はじめて聞いたのだ。
吉良の屋敷内の長屋へ帰ってくると、狂太郎は弟の一角に、