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くちぶえをふくぶし
口笛を吹く武士
林 不忘
「サンデー毎日」1932(昭和7)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,467 字 · 21 页
これが狂太郎だったかもしれない。どうにもしようのないほど酔っていたというから、孫太夫と渡り合って別れてから、たやすく誰かに斬り伏せられたことだろう。
翌朝、吉良の首を槍の柄に結んで、回向院無縁寺の門前に勢揃いした一党が、高輪泉岳寺への途中、廻りみちをして永代橋を渡っているとき、行列のなかの武林唯七が、
「おい、間!」と、ふり返って、雪のなかに立ちどまった。「口笛が聞える――。」
武林とおなじに、返り血で全身黒くなっている間新六も、歩をとめた。
「なに、口笛が――?」
「うむ、聞える。耳をすまして――ほら! どこからともなく、口笛が――ほら!」